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  • 執筆者の写真藤堂真也

9/19, 20 展示 配信のレポート

現場設営を始めた前日の9月18日は台風が上陸しており、汗雨血泥でぐっちゃぐっちゃになりながら重たいコンクリートの塊を運んでいるときには、翌日・翌々日の展示配信に対し割と絶望していました。


しかしながら展示初日の9月19日は雲一つないびっくりするほどの快晴でした。風も穏やかでパビリオンを展示するのに申し分のない天候でした。

この記事ではそんな最高な天候の中でようやく立ち上がったパビリオンの展示と配信について、設計時のコンセプトと照らし合わせながらレポートしてみようと思います。


パビリオンのレポート

まずはこちらをご覧ください。

5月の記事でお話ししていたように、今回の「オーガンジー布と金属ワイヤーによるボロノイ膜体のパビリオン」のコンセプトは、①コロナ禍パーティションからの連想、②水中のような体験、③建築の「モノ性」と「ハコ性」の狭間、の3点でした。


①コロナ禍パーティションからの連想

これはボロノイ図をデザインに採用する理由となったコンセプトです。

圧縮力を加えることのできない金属ワイヤーでボロノイ図形の網を構成し、形を美しく出すことについては、設計の始まった当初からその難しさを内外から指摘されていました。構造班の丁寧な構造設計と、構法班による作業量として無理がなく、精度の出るワイヤーの編み上げ方の検討を経ていたため、ある程度の自信はありましたが、やはり当日に膜体を立ち上げるまでは、形が崩れるのではないのかとか固まらないのではないのかという不安が残っていました。



実際に立ち上がったボロノイ膜体は、設計通りすべてのワイヤーに引張の力が加わっており、散々モニター上で見てきた3Dモデルと同じ形をしていました。一つ一つのボロノイの形もきれいに出ており、結構興奮しました。

人が余裕をもって入れるように設計した中央付近の大きなボロノイ小部屋に入ってオーガンジー越しに隣の友達や周りの風景をみたり、地面に寝転がってボロノイ型に切り取られた青空をみたりと、設計時に想像してた様子と答え合わせをするように楽しみました。

学外者立ち入り禁止の五月祭で、楽しんでいるのがほとんど私たち設計メンバーだけでしたが、ドクターの方が連れていた小さなお子さんが、かくれんぼのように出たり入ったりして遊んでくれたのを見たときは作ってよかったなあという気持ちになりました。



②水中のような体験

これは全体形状や素材選定の根拠となったコンセプトでした。


台風一過の強い日差しを受けたオーガンジー布はキラキラと輝き、少しまぶしいくらいでした。

膜体から顔を出したときに広がるきれいに張られた曲面も、膜体の下で風に揺れるオーガンジーも、白くキラキラとしていて水中を連想させました。

個人的に特に印象深かったのは緑の地面の上に落ちた膜体の影です。濃淡のあるオーガンジーの影は、想像していたよりもはっきりとしており、強い日差しに感謝しました。

午後になるとパビリオンは工学部広場中央にそびえる大銀杏の影に入りました。日差しの下で白く輝いていたパビリオンは、打って変わってしっとりとした青みを帯びるようになり、こちらもなかなか乙なものでした。

日が落ちた後、スマホのライトで照らすと行燈のようにぼんやりと光を帯び、また変わった表情を見せました。オーガンジーを使うということで当初から光らせる案はあり、長い検討の末諦めたのですが、やはり丁寧なライトアップをした姿も見てみたかったなとかんじました。


③建築の「モノ性」と「ハコ性」の狭間

これが最後のコンセプトです。

いろいろな高さや厚みをつくった膜体が設計通りに立ち上がり、一つ一つのボロノイ小部屋に入ったり、膜体の持ち上がったところの下にイスを持ち込んだりと、いろんな楽しみ方を作ることができました。(いろんな楽しみ方をしたのがほとんど私たちだけだったのは、しょうがないとはいえ寂しかったですが。。。)


柱・カウンターケーブル・コンクリートウェイトについて

ボロノイ膜体以外の要素もこだわって設計したものでした。

単管の柱はスラっと細くそびえ、柱頭でのカウンターケーブルとの接合部や、カウンターケーブルの分岐点の収まりもシャープに感じられました。


立方体が地面に沈み込んでいるようなデザインのカウンターウェイトは、夏の間に広場の草が伸びていたおかげで接地面がぼやけ、期待通りの「沈みっぷり」をみせてくれました。白っぽいコンクリートの肌も、あざやかな草の緑に対してとても美しく感じられました。

立ち上がったパビリオンや設営の様子の写真はギャラリーにたっぷり上げてあります。ぜひご覧ください。


配信のあれこれ

今回の五月祭は学外者の構内立ち入りが制限されていたので、現地に訪れることなくパビリオンを楽しんでもらうための配信方法を考えていました。


東京大学先端科学技術研究センター身体情報学研究室および株式会社ハコスコ(Hacosco Inc.)、さらに東京大学工学部・大学院工学系研究科情報システム室のご協力のもと、複数台の360度カメラによる生配信を行いました。


バーチャル東大のワールドに置いたパビリオンのモデルからも、実際の配信映像にアクセスできるようにして頂き、できるだけ「訪れた」感覚をもってもらえるように工夫しました。


360度映像に構造解析時の3Dモデルを重ねて配信するなど、配信ならではの体験も試みました。録画映像から当日の360度配信の様子をのぞいてみてください。


解体のお話

2日目の日没を迎える前に現場撤収をするべく、16時ごろには解体を開始しました。

膜体をワイヤーとオーガンジーと結束バンドに分解していく作業は、意外なほどスムーズに進み、2月から休止期間も含めて7か月間準備してきたパビリオンは、ものの1時間半くらいでゴミ袋に収まってしまいました。(寂しそうに書きましたが、じっさいは大銀杏の下で皆で歌を口ずさみながら楽しくバラしていきました。)


これで私たちの代の建築学科パビリオン・プロジェクトはお終いです。皆で試行錯誤しながら実際に手を動かすのはとても楽しかったです。

ご覧いただきありがとうございます。


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