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  • 執筆者の写真梶村 寛

9/18, 19 ようやくの現場設営

当初5月に予定されていた建設日程は、新型コロナウイルスのパンデミックによって9月に延長されました。




4ヶ月半にわたる中断の間、5月に完成した膜体や各部分のパーツは資材置き場で保管されていました。


9月18日の設営日は、台風の通過に伴う雨模様でした。午前中は雨足を伺いながら、コンクリートの部材を運び込みました。



午後には雨が小降りとなったため、急ピッチで測量と設営を進めました。パビリオンを支持する構造物を設計どおり正確に設置するため、測量は極めて重要なプロセスでした。手法の選定に際しては、確実な精度が確保できることと、全体のバランス調整が効くこと、現実的な作業量で施工できることが求められました。


そこで、今回の測量作業には三角測量を用いました。国土地理院による地形の測量などにも用いられる古典的な手法ですが、簡便でありながら強力なソリューションでした。



具体的には、位置を決めたい点どうしを結んだ三角形を考えて、正確な各辺の長さに測りとった紐を張り巡らせることで、実空間における正確な位置を決定しました。三辺の長さを正確に測りとった三角形は、ピンと紐を張ることで歪みなく地面の上に作ることができます。三角測量はこの原理を利用し、正方形や長方形など平行線によるグリッドよりも高精度な位置決めができました。



測量作業の様子です。設計段階でできるだけ大きいサイズを指向していたため、敷地の大きさに対して余白が少なく、舗装された通路にはみ出さないよう注意しました。担当者が敷地全体を見渡して指示を出しながら、全体のバランスを見て微調整を繰り返しました。







位置決めが完了すると、カウンターウェイトの設置と柱の建て込みを行いました。

コンクリート製のカウンターウェイトは4月に打設したもので、あらかじめ60cm程度のペグが打ち込まれています。これを地面の所定の位置に突き刺すことで、引き抜きとすべりに抵抗する基礎の役割を担いました。

柱は、金属部品とコンクリートの塊を組み合わせた柱脚を用い、摩擦力による滑りの抑制と、作業中の軽微な張力導入に対する転倒復元性を実現しました。柱脚を重い素材で作成することにより、多少の外力に対して自立した状態を保ってくれるため、作業効率が大幅に向上しました。



夕方には柱の倒れ込みに抵抗するカウンターケーブルを張りました。柱頭とカウンターウェイトを緊結することによって、膜体を吊ることによって生じる柱脚を回転中心としたモーメントに抵抗します。この部分は特に大きな力がかかり、破断した場合には全体の崩壊を招きかねないため、各部のディテールには安全的余裕を持たせ、カシメスリーブを2つずつ設けるなどフェイルセーフの設計を取り入れました。


翌19日は、台風一過の快晴となり、問題なく仕上げを行うことができました。




膜体を3本の柱から吊り下げ、4方向の引き下げケーブルで外へ引っ張ることで、宙に浮いたパビリオンの形状を作り出しました。引き下げケーブルは地面に打ち込まれたペグに結び付けられており、張力を負担します。




全ての接続点を繋ぐことで、カウンターケーブルや引き下げケーブルに張力がかかり、カウンターウェイトやペグがその張力に抵抗します。網は構造シミュレーションによって全ての辺に張力が入るようデザインされているので、各部を構成するワイヤーに適切に張力がかかることによって、ボロノイ分割の形状が実現しました。






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