プロジェクションによる墨出し
最初のモックアップ作成時に見つかった問題が、ひとつひとつ形の違った、また最終的には300枚以上にも膨れ上がった大量の布を切り出すにあたってどのように墨出しをするのかということです。
当初、私たちは、何も考えずに型紙を印刷してそれに沿って切り出すことを想定していましたが、膨大なデータを目の前にしてすぐにそれが無謀な挑戦であると悟りました。そこで浮かび上がったアイデアがプロジェクションによる墨出しという案です。
(布に投影して印をつけている様子)
幅1.1mの布に対してプロジェクターでデータを映し出し、後で切り出しができるように布の上に印をつけていきます。これによって型紙を作るという大きな手間を省くとともに、紙資源の消費を未然に防ぐことができました。
プロジェクションデータは1.1m幅の布にちょうど投影できるように布の形状のデータを配置していきましたが、これが全長200mあまりという途方もない長さとなりました。限られた人数でこれだけの量の布を処理することができたのはプロジェクションという方法を選んだからこそできたことです。
布の切り出し
布の切り出しにあたっては慎重な検討が進められました。今回使用したオーガンジー(※)という材料は、はさみなどで切ると糸のほつれが目立ち、ディテールとして美しく仕上がらないのではという懸念があったためです。
(※)オーガンジー:硫酸仕上げによって、独特の透け感とハリとコシをもたせた薄手の生地
これに対し、テープを貼って布の端部を処理する案やミシンで処理する案が浮かびましたが、デザイン性と施工性を秤にかけて検討を進めた結果辿り着いたのは、はんだごてで切り出すという案です。布に「はんだごて」を押し当てることによって熱で端部を溶かし固めながら切り出すことができるのです。これによってデザイン班は端部のほつれという見た目に大きく関わる課題から解放されたのです。
(はんだごてで切り出した布端部の様子)
また、はんだごてで切るにあたっては布の材料が上記のように熱で溶ける性質を持っている必要があり、材料の選定にも大きく関わるものでした。この条件を満たしたのがナイロンオーガンジーで、ほつれなくきれいに切り出すことができました。
(はんだごてでの切り出し作業の様子)
布とワイヤー・布同士の接合
布まわりの接合に関しても、見た目に大きく関わる問題として幾度となく検討を重ねてきたテーマです。検討の大まかな方針としてはオーガンジーという素材を魅せるために適度な歪みを持たせつつ、突っ張るような形状とならないように制御するということです。布材は構造とは無関係であるため比較的接合の自由度が高かったこともあり、様々な案が浮かんでは消えていきました。
(布同士の三つ巴型の接合部)
布とワイヤーの接合は両面テープ、結束バンドなどいくつかの検討をしましたが最終的に辿り着いたのは、もっとも単純な施工で済むホッチキスでの接合です。布同士の接合も同様にホッチキスで留めることにしました。布同士を取り付ける作業はワイヤーによるボロノイ網を立ち上げて形状が確定してから行うこととし、布がなるべく自然な形で取り付くようにしました。
(ワイヤーと布との接合部)
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